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ワタリポ(ワタクシ的リポジトリ)

サッカーからオープンアクセスについて思うこと

大谷 周平

24/5/17

琉球大学

JPCOAR作業部会のメンバーにお仕事紹介をしていただきながら、個人のリポジトリ的なことがらも語っていただく連載企画「ワタリポ(ワタクシ的リポジトリ)」。

第2回は「次期JAIRO Cloud移行タスクフォース(-2023年度)」の大谷周平さんにご執筆いただきました。


 ここ数年は息子がサッカー部に入ったことの影響で、地元のJリーグチームの観戦が趣味になっています。毎週末、一喜一憂の日々、憂の割合が高めな気がしますが…。そんな地元チームやサッカー観戦に関する記事を調べてみると


熱狂的サッカーファンは負けたら命の危機!? 英大学が“ストレス”を研究「悲惨な試合になるほど…」(サッカーダイジェスト 2020年1月26日付) https://www.soccerdigestweb.com/news/detail/id=69203


 この記事の元になった論文は購読型のジャーナルに掲載されていますが、共著者がリポジトリに掲載しているので、オープンアクセスで読むことができます。


元論文:Devoted fans release more cortisol when watching live soccer matches https://doi.org/10.1002/smi.2924


同論文が公開されているリポジトリ: https://pureportal.strath.ac.uk/en/publications/devoted-fans-release-more-cortisol-when-watching-l ive-soccer-matc


 また、自分が応援しているチームについては、国内のリポジトリにも以下のような論文が公開されています。


プロスポーツチームが根差す「地域」とは? : マルチスケールで展開するFC琉球をめぐる多様な主体の思惑と戦略

http://hdl.handle.net/10748/00010154


 冒頭に書いたようにここ数年で観戦するようになっただけなので、歴史的な経緯や調査分析された論文があるというのは興味深く読みました。


 センセーショナルな記事の根拠となっている論文であったり、日常にかかわるものが一定のルールに従って記録され、オープンになっていることは、普段は意識しなくても重要なことに思えます。メディアでDOIやURLなどの典拠が示されないことに不満を感じることが多くあります。これは紙幅の制約が最大の理由だとは思いますが、あわせて学術論文などへのアクセスが限定的であり、例え典拠を示してもアクセス出来ない人が大多数であったということも影響しているかもしれません。多くのメディアがウェブ上でも情報を展開していることから、すくなくともウェブでは紙幅による制約はありませんし、オープンアクセスが一般的になり、識別子やライセンスの明示など利用に関する環境が整備されることで、メディアでも典拠が適切に記載されるようになることを願っています。


 と、無理矢理、趣味の話からオープンアクセスに繋げたところで、業務では機関リポジトリ、図書館システム、雑誌契約、大学出版会などを所掌する係にいます。学生時代に、NACSIS-CATの多言語化に伴い、韓国語目録の遡及アルバイトをしたことで、情報を組織化することで、広く資料が認知され利用可能になるということに感銘を受けて、大学図書館員になりました。自機関のコンテンツをオープンしていく、機関リポジトリの業務はそれに通じるものと考えています。

 

 一方で、オープンアクセスの注目度が上がっている昨今ですが、正直なところ、仮にグリーンオープンアクセスが理想的な形で実現したとして、それは現在の学術情報流通の抱える問題の解決につながるのであろうか、という疑問はあります。当然ながら、簡単に解決する問題であればとうの昔に解決しているはずなので、現在のような機会を活かし、関係者と問題を共有し、模索していくことが重要だと考えています。私もその一端に関わる者として、今後も出来ることや面白くなりそうなことに取り組んでいきたいと思います。


 JPCOARでは2017年度から、広報・普及作業部会、コミュニティ強化・支援作業部会、コンテンツ流通促進作業部会、次期JAIRO Cloud移行タスクフォースなどに参加してきました。JPCOARウェブマガジンの前身?である、JPCOAR Newsletter: CoCOARの編集企画や、JPCOARウェブサイトの運用、メーリングリストの立ち上げ、SCPJの移設、JAIRO Cloudの問い合わせ関係の業務をやってきました。2020年度以降は、ほぼ次期JAIRO Cloud移行(WEKO2→WEKO3)に伴う仕事でした。いろいろ反省はありますが、兎にも角にもWEKO3への移行が終わったことにほっとしています。


 作業部会に参加することのメリットは、やはり全国のオープンサイエンスやオープンアクセスに関わる機関の方々とのつながりができることだと思います。作業部会に入ったからといって、初めから高度な知識が要求されるわけでもないので、それこそ学内で機関リポジトリの運用について相談出来るような人がいないと悩まれている方ほど、得るものは大きいのではないでしょうか。誰でも最初は初心者ですので、お気軽にご参加検討してください。


 つながりという意味では、JPCOARの活動を通じて2回の海外発表の機会(2017年韓国、2018年台湾 ※ヘッダ画像は韓国の天帝淵の滝です)も得ることが出来ました。それぞれの国でもちろん事情は違うのですが、意外と悩んでいることは似通っていると感じ、勇気づけられたのを覚えています。韓国のときには、出張旅費の調整が出来ていなかったり、2回目は台風のせいで滞在を延期したり(帰国後も自宅が一週間停電断水…)と、出張事務でJPCOAR事務局には迷惑を掛け通しということばかり覚えています。新型コロナ禍を経て一時期はオンラインイベントばかりでしたが、最近は現地開催も増えています。


韓国 Asia Data Weekでの発表

台湾 ETD 2018の表彰

 JPCOARのような組織は海外出張に限らず、個々の大学ではなかなか機会を作ることや取り組むことが困難な問題を共同で検討する場でもあります。コミュニティとしてやるべき事はやりつつ、やりたいことを実現するための場として作業部会に参加いただければと思います。


 サッカーに限った話ではありませんが、さまざまな個性をもった選手が勝利という共通の目的に向かっていくことが、観戦の魅力だと感じています。オープンアクセスのコミュニティも、個人としても機関としてもそれぞれの個性を活かして、持続可能な学術情報流通の構築(そもそもの共通の目的は?という議論はありそうですが)に向かっていければと願っていますし、私も自分にできることを続けていきます。


 
[1] ストラスクレイド大学はElsevier社のPureを使っているんですね。サッカーダイジェストの記事は、BBCの記事を元にしたものなので、この論文が典拠というわけではないのですが…。
[2] Asia Data Week 2017 https://jpcoar.repo.nii.ac.jp/records/60
[3] ETD 2018 https://jpcoar.repo.nii.ac.jp/records/137

 

文:大谷 周平

福岡県北九州市出身。そろそろ地元よりも沖縄で過ごした期間の方が長くなりそうです。普段はかりゆしウェアで仕事しているので、年に数回ネクタイしたりすると、周囲から驚かれます。業務でプログラミング(おもにPython)を書いている時間が楽しかったのですが、生成AIに書かせれば事足りてしまうことが多くて、楽にはなりましたが楽しい時間はへってしまって、すこし残念な今日このごろです。

 

本記事は クリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 ライセンスの下に提供されています。
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